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執筆者の写真Miyu Kuroki

ラマダン月の話



いろいろとワケ、というか思うところがありまして、イスラム歴「ラマダン月」に行われるイスラム教の斎戒に一ヶ月間参加していました。

今年の5〜6月のハナシです。(もう半年前!嗚呼!)


初めに私の家の宗教というか、信仰というか。

実家には神棚がありまして、天照大神が祀られておりました。

お父さんが毎朝お供えのお水をかえていて、私も時々手を合わせていました。

だけれど特別信心深いという家でもなく、時折観光で神社を訪れたり、またはお正月に家族で神社にお参りしてお札を授かったり焚き火に当たって過ごすのが楽しみでした。


ある時父方のおばあちゃんが亡くなって、葬儀の際に初めて自分の家が仏教の臨済宗の家であることを知ったり。


母方のおばあちゃんの家には仏壇の横に神棚があって、おじいちゃんは毎朝必ず両方にお参りをしていました。


それからいろいろワケあって、私は今年初めてイスラム教の勉強をしつつ斎戒に参加することになったのですが、この斎戒のなかでも一番知られているのは「断食」です。(本当は他にも慎むことがあるんですよ〜)

断食といっても、一日中飲まず食わずなのではなくて、お日様の出ているうちだけ飲食をしません。

本来は日が暮れたら家族で食事を楽しむ!のが習慣で、イスラム圏だと町中がパーティーみたいらしいのですが、私はひとりラマダンなので日没後大学でコンビニのパスタなんかを食っておりました。



飲まず食わず。



これが目を白黒させるほどにキツい。


私は初・断食なので、お昼にプロテイン1パックのみ口にするようにしていたのですが、もう全く授業が耳に入らない。ラーメン、カレー、牛丼、餃子……本気でそんなことばかり考えていました。

というか、気がつくと何かを食おうとしているのです。


腹が減るといろんなことを考えます。

食べ物のこと、お金のこと、人間関係のこと……

漠然と不安になってくるのです。

だけれど、不安のおおもとって欲望なのですよね。

「斎戒」という欲望をセーブする時間を設けることによって、私は「欲望の棚卸し」をしているような気分になりました。際限なく欲を満たしている時には見えなかったものです。

(お店も、臨時休業をして棚卸し作業をしたりしますよね。)


そして、ラマダン月の大不思議。


ムスリムの知人は皆、断食がへっちゃらだというのです……(ツライ人もいるかもだけれど)


普段きっちり三食食べている人も、日が出ている間の断食は平気でぴんぴんと忙しく立ち働いていました。(私は空腹で朝と夕動けなくなっていた)

慣れと信仰心、どちらもあるのかもしれませんが、人間はまったく不思議なものです。



もしかすると、私は断食なんて「できない」と思っていたからできなかったのでは……とも思います。



案外、私は普段欲望のままに食べ過ぎなのかもしれません。「習慣」だけだったのかも。

そして、案外できたりするのです。


食べてしまう日もありました。欲望のままに学食でラーメンをお昼にかき込んだり。

だけれど、断食を守れた日の方が多かった。そんな日は不思議と胸が清しいものでした。


ラマダン月は日没中に食事を摂るため(ムスリムの方はそしてお祈りのため)毎朝午前3時ぐらいに起きるのですが、これも段々と苦痛では無くなってきました。

自然と、スッと目が覚めるようになってくるのです。

ご飯のことも、生活のリズムのことも、弾みがついてくると車輪のように生活が回ってゆきました。


人間、案外できるものだな〜って思ったりして。




ラマダン月には困ったり、意外な発見をすることも多々。

イスラム教の勉強をする身として、そして斎戒に参加する身として、

ラマダン月の間はイスラムのルールをなるべく守って生活をすることにしました。


お酒を飲まないこと・豚肉を食べないこと・髪を覆うこと

人に親切にすること・嘘をつかないこと・喜捨すること


違うよ!と言われることもあるかもしれませんし、本当はもっといろいろなルールがあるのですが、

今の自分にできる範囲で守ってみました。


○お酒を飲まないこと。

元来お酒大好きニンゲンとしてキツイかも……と思ったのですが、

お酒から距離を置いてみると、私が好きなのはお酒ではなく酒席であることが判明。


だけれどラマダン月が明けてお酒を飲んでみるとやっぱり最高にウマイ。


○豚肉を食べないこと

これは結構難しい。私は超自炊が苦手でコンビニ&スーパーの惣菜大好きなのですが、原材料って結構容器の裏に書いてあるんですよね……

コンビニで弁当を頭上に持ち上げて底を覗き込む姿。アヤシイ……(なかなかやりづらい)


そして、「豚」表記っていろんな形式があるんですよね。

「豚肉」だったり、「ポークエキス」だったり、「ゼラチン(一部に豚肉を含む)」とか……

時々原材料名欄には書いてないのに、欄外に豚肉表記があるツワモノもいます。


日本語に慣れている私は豚肉を避けて商品を購入することができます。

しかし日本語に慣れていない方には相当ストレスのかかる作業だな……(そして誤って口にする可能性がある)と思います。

豚肉マークとか、豚肉のイラストとかが入っていれば良いのにな、と思ったり。


しかし! 安心して購入できる素晴らしいものがあったのです……!!!




それは、韓国の袋麺!!!!!



韓国のインスタント麺には、最寄りの輸入食料品店で売られているメーカーのものは全て「ハラル認証マーク」が付いているのです……!!!(種類豊富!)


※ハラル認証マーク=ハラル(イスラムの教えで許されたもの)が認められた商品に付いているマーク。つまり食べてオッケー!!!


身近に買える商品にもハラル認証が増えると良いのだし、肉の使用が少ない和食は結構ハラルと相性が良いのではと思ったりする。


○髪を覆うこと

これはけっこうドキドキ。だって一番大きな「記号」なのだから。

髪を覆って大学の授業に出席すると、意外と突っ込まれない……


だけれど噂になっていた(らしい)


噂で聞いたよ!改宗したんだってね!(私はまだ改宗していない)


と後々言われることもしばしば。


そして、不思議なことに方々で「外国人」だと思われていた。

大学一年の頃から通い詰めたコンビニでも「外国人の常連さんがいる」と認識されていたり。

なぜかアヤシイと思われたこともありました。

何よりも、心が緊張でいつも縮こまっていたな…というかんじ。



なんでこの場にラマダン月のことを書こうと思ったのだろう。

だけれど「生活」を身体を通して生々しく体感したのは間違いなくこのひと月だった。


生きていたなぁ〜 なんて思う。


本当に泥臭かった。腹ペコで動けなかったり、本能のままにカルボナーラを貪ったり、

髪を覆うベールを留める待ち針が首に刺さって一日中痛かったり。


豚肉は入っていないか!?


なんて、いつもとは違う嗅覚で視点でコンビニを見回したり。


本当に、焼き鳥食べに行った時なんて喉から手が出るくらいハイボール飲みたかったよ。


これも、サバイバル…?なんて思いました。

ヌルヌル生きている今よりももっと嗅覚が発達してたというか。



まとまっていないけれど、こんな感じです。


来年もラマダン月、斎戒に参加したいな。



黒木美佑



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