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執筆者の写真Miyu Kuroki

ねころび日記

更新日:2021年11月22日

夜、メンバーとカウンターでうだうだハナシながらふっとランタンに手をかざすと、手の甲が真っ赤にに輝いている。


あ、生きているなあ。なんて思ってしみじみ。


会場に布団を敷いて寝転ぶと、鼻先に土があって、葉が顔をかすめんばかりのところにある。

玄関先のタタキにはスピーカー屋さんと古本市。チカチカ音に合わせて点滅する光はモールス信号みたいで、何かのシグナルみたい。宇宙と交信なんてできたらいいな。


私は清しい心持ちで、病院指定入院体操音頭を土の上で踊る。


ものを書くにつけても、枕の頬に触れる感覚につけても病の悲喜こもごもが思い出される。


私は双極性障害という病を得たのだけれど、なぜ私が病に選ばれたかなんてググっても分からないのだし、これも天命かと思うけれども、それにしても漠然と、ひたむきに憎いものである。

私みたいにちっぽけな存在が目一杯に生きて、ひとすじに身の幸を、他者の幸福を常日頃の感謝を天へ祈ることができたのならば、私はそれだけで、人間は生きているのに十分だと思う。


来てくださった方にノンキ症についての「語り」をする私は私自身の心持ちを、「双極性障害」の部分をただ「ノンキ症」に変えて語るのだけれども、セリフがセリフを超えて私の言葉である。


来てくださった方の中には、「私もノンキ症かしら」「ノンキ症がうつりたいなあ」と言ってくださる方もいて、意外なような、面白いような嬉しいような、なぜかかなしいようなヘンテコの気持ちがするのです。


診断を受けた時、ただ、人生が終わったのだと思って、生きたままにじられた心地がしたのです。

いよいよ美大に入って、私の人生が開けるのだと思った矢先ですから、ただ口惜しくて、自分の頬を目一杯引っ叩きまくっても、引っ叩いても気は済まず、ひたすらに自分を罰してやろうと思いました。


乱高下するのも自分の体であるのだし、ひたすらに自分自身が憎たらしくて、私自身を責めずにはいられないだなんて、そんな心地であったのだけれども、

暴れ回っているとフッと憑き物の落ちる瞬間があって、メチャクチャにに立ち回る自分がおかしくってならないのです。

どんなに思い詰めたって喜劇なのだなあと思います。



恋人に告げたとき、

あの人は海釣りの途中で、ビデオコールをかけた時、あの人は公衆便所にいました。


私、双極性障害だって。こんなにメチャクチャになるんだよ、ヤでしょ。


ボロボロの、にじられてウエスみたいな顔で告げたのだけれど、あの人は眉ひとつ動かさず、一緒に治そうと言ってくれてそのとき、ああ、一緒に生きていくのだなあ、なんて一つの覚悟をしたのだし、

天命というものがあるのならば、ひとえに仕方が無いものだ、呑もう、と思いました。


子どもは? 私は精神科の広い診察室で見た、ボールペン書きの家系図を思い出す。

精神疾患のある親族を尋ねられて、何人かの親族が黒丸でグリグリと表されたあの黒さ。


この病と遺伝の関係ははっきりしていないというけれども、やはり気に掛かるあのときの質問。


だけれども、子どもにこの「病」の心配をするだなんて、私はこの病を「不幸」だと思っているのだろうか。

私は「不幸」では無いのだし、むしろ幸せだとさえ思うのだけれども、この病を得た人間は病人らしく、不幸そうに振る舞うべき天命にあるのかしら。


さいわいというものがあるのならば、にじられたってこの、ランタンに手をかざしてわあ、赤い。だなんて喜びがあるのならば、人間の一生はそれで十分じゃありませんか。


双極性障害がうつりたい人もいるのかなあ。なんて、ノンキ症患者になりながら、ぼんやりと展示室に寝転びながら考えていました。正直に申しますと、ナカナカ楽しいですよ。


躁のときなんて最高で、ひたすらに世界が薔薇色に優しくて、キラキラと漂うように生きて、何よりも自分はチャーミングでサイコー可愛い気がしてならないのです。


躁の、深酒の浅い夢みたいな後に見る鬱の世界は手触りがある。

ああ、これが世界の手触りなのだと、私たちはウツツばかり見ているけれども、これが生きてゆく味なのだと、鬱に対して妙にしっくりする心地。


そんなことをぼやぼや思いながら、ひたすらに寝転んでおりマス。


いろいろ書いちゃった。


くろき

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